天文リフレクションズ様の読者レビュー企画でお借りしました。
山口編集長、またとない機会をありがとうございます。
SVBONY様、大切な商品をお預かりします。大切にレビューします。
SVBONY社のMK105MM、口径105mm/焦点距離1,365mmのマクストフカセグレン鏡筒。
焦点距離が長くて惑星向きと思います。
Vixenの普及型アイピースNPLの25mmで視野角が0.91°になる計算です。
お月様がこんな感じに見えます。*1
SVBONY MK105MMの商品画像はこんな感じ。
長さ377mm/重さ約2.2kgとコンパクトです。
CelestronやMEADEからこのクラスのマクストフカセグレンがよく売られていた記憶があります。
こんな感じの。
シュミットカセグレン式と似ていますが、マクストフカセグレン式は口径100mmくらいの小さめモデルが多いようです。
マクストフカセグレン式は補正板が球面で足りるのが特徴です。
シュミットカセグレン式のように高次非球面の補正板を要しない分、製造コストを抑えやすくリーズナブルな価格で販売しやすいからでしょうか。小さめモデルで比較的手に取りやすい価格。
マクストフカセグレン式の「補正板」は、屈折式の対物レンズっぽいところにあるやつです。
下図でCorrector Plate(補正板)と示されています。
日本メーカーもマクストフカセグレンを販売していましたが、やはり小型です。*2
いずれのメーカーも「小型」「手軽」「入門/中級から上級への橋渡し」の役割を期待してラインナップされていたと思われます。
SVBONY MK105MMも例に漏れず小さくて、はじめは赤道儀に載せていましたが手軽なAZ-GTiに載せて持ち出したくなりました。
画像でみえる補正板の面で、白く見える部分が副鏡です(裏側)。
補正板の一部をメッキしてそのまま副鏡に使えるため、製造コストを抑えることができます。*3
自分のツイートで副鏡の直径を測って遮蔽率を計算していましたが不正確で、おそらく迷光対策に挿入されるバッフルによる遮蔽もあり、実際は直径比30%程度の遮蔽率に落ち着くと思われます。*4
とはいえマクストフカセグレン式は副鏡を補正板自体で支える構造上、ニュートン式のような副鏡を支えるスパイダーがありません。
スパイダーによる回折がないせいか、SVBONY MK105MMの眼視像は驚くほどシャープでした。
「約4万円で/このサイズで」を踏まえると、驚異的なまでの鮮明な像です。
マクストフカセグレン式といえば、地元の科学館の観望会ボランティアで少し触れたINTES-MICRO社(廃業)のALTER-7も同じくマクストフカセグレン式で、解像度の高い素晴らしい鏡筒でした。
ただ、ALTER-7は口径が150mmと大きい分か、分厚いメニスカスレンズを支える丈夫な鏡筒が非常に重かったです。(約7kg!)*5
しっかり運べるよう取っ手が付いていました。
一般にレンズ/補正板が分厚いと温度順応に時間がかかりますが、小口径ならあまり問題にしなくてよいと思います。
この辺りも入門~中級向けに小口径のマクストフカセグレン式がラインナップされてきた理由でしょうか。
たいへん扱いやすく、価格の割に見え味がとても優れると思います。
と、ここまでほぼマクストフカセグレン式小口径鏡筒の一般論に近いですが、お借りしたSVBONY MK105MMで月面の地形をぐるり3時間ほどかけて眼視観望/コリメート撮影して見え味や使い勝手を確かめて、理屈通りの性能がきちんと発揮されていることを確かめた上でのよもやま話です!
【あとがき】
せっかくの天リフ読者レビュー企画なのでSVBONY社の商品ページに丁寧にリンクを貼りましたが、金品は頂いていません。お借りした機材もお返ししています。名残惜しかったですが!
私のメリットは「新製品の機材に無償で触れられる」体験です。
金品等の利益はありません。金品等を頂くほどの文章を書きませんから。
基本的にポジティブなことを書いたのは、実際に価格の割によい機材だったことが大きいですが、「価格の割に」ですからネガティブな点もありました。
次回以降はネガティブな点も少しは書くつもりです。*6
とはいえ、フラッグシップ機と比べればネガティブな点があるのは当然で、素人の読者に「好きなようにレビューしてね」と預けて心配ないくらい、丁寧に作られたよい機材であることに変わりないと思います。*7
次回は、底冷えする2月の京都で午前1時~4時の3時間かけて月面の地形を観望したレポート/レビューの予定です。
寒かったよ!がんばったよ!
*1:岡山アストロクラブ様の「天体観望のためのアイピース視野シミュレーター」による生成画像です。
*2:Vixenは正確にはVMC式(Vixen original Maksutov Cassegrain)で、マクストフカセグレン式のVixenによる改良型。VMC200Lは口径200mmと大きく、実は必ずしも小型鏡筒に限られる訳じゃない。VC200LはVixenによる改良カタディオプトリック光学系で(VISAC式)6次非球面もの凄まじい補正板を用いる高度な光学系。どうやって作られているのだろう?想像も付きません。
*3:補正板の一部をメッキしてそのまま副鏡に使う方式はグレゴリー式と呼ばれます。副鏡の曲率と補正レンズを一致させる拘束上、周辺の補正が不十分になるとされますが、実用上大きな問題は発生しづらいと思います。
*4:友柚工房様のBKMAK180レビュー記事を参考に推測しました。
*5:ALTER-7はたぶん独立した補正板を持つルマック式マクカセ。
*6:ベタ褒めレビューは不気味ですから。
*7:SVBONY SV550はどこをどうほじくり返してもネガティブな点が見当たらず、ベタ褒めレビューにしかならなくて困りました……。あえていうなら約12万円の価格は誰もが手軽に手を出せるといいづらいですが、完璧としかいいようのない3枚玉EDアポとしてなら「ご冗談でしょう?」と漏れる価格と思います(マイクロフォーカサー・フラットナー込み!)。