Stellariumで自宅などいつもの撮影地の風景を設定する方法。
設定すると思いの外に便利です。
撮影計画・観望計画に大活躍する割に簡単だからおすすめです。
パノラマ写真の準備(空の透明化)
まずパノラマ写真を用意します。
これはストックフォトの素材写真です。*1
パノラマ写真はスマホのパノラマ写真モードで撮ったもので構いません。
360度の全周パノラマ写真を撮れなくても、つなげばOKです。つなぎ方は別エントリで書きます。
天頂まで天球写真を撮れなくても、建物等と空の境界線が写っていればOKです。
「スマホ分からん!標準レンズと一眼カメラしかねぇ!」という場合も、ぐるり撮ってPhotoshop等でパノラマ加工すればOKです。*2
余裕があればRICOH THETAを買っちゃいましょう。たのしいよ!
ではStellariumに設定する準備から。
まずは用意したパノラマ写真の空を透明化します。
用意したパノラマ写真をPhotoshopやGIMP等で開いて、背景レイヤーのロックを解除します。*3*4
んで、[選択範囲]-[空を選択]して、
[Delete]キー!
空の部分が透明(チェック模様)になっていれば成功です。
なっていない場合は、背景レイヤーのロック解除してあるか再確認します。
次はこいつをPNGファイルで書き出します。
注意点は、画像ファイルのサイズを2の階乗ピクセルにすることです。たとえば4096x1024、2024x2024など。
さもないとStellariumの仕様上、クラッシュします。
[ファイル]-[書き出し]-[書き出し形式]で、
「画像サイズ」の「幅」に2の階乗を入れてあげましょう。
大きくても4048で構いません。
あまり大きいとStellariumが落ちるそうですが、ハードウェアとドライバに依存するそうです。
画像処理用の速いマシンなら落ちないかも知れませんが、スカイライン境界が得られれば足りるので4048でいいと思います。
Stellariumへの設定(まずは仮設定)
任意の名前で書き出したら、
そのファイルを書き出した先で、Stellariumの風景ZIPファイルに必要なlandscape.iniファイルを作ります。
「メモ帳」で構いません。
公開しない私家版なので最小限の項目にします。
下記はサンプルです。
[landscape]
name = MyHomeBalcony
author = Zhya
description = 自宅ベランダ
;type = fisheye
type = spherical
maptex = myhomebalcony.png
angle_rotatez=0.0[location]
planet = Earth
latitude = +35d0'42.07"
longitude = +135d46'5.34"
altitude = 40
timezone = Asia/Tokyo
"name"は背景の名前。
"author"は背景の作成者名。
"description"は背景の説明。
"type"はパノラマ写真の種類。今回のような一般的な横長のパノラマ写真なら"spherical"とします。
次のような円周魚眼レンズのパノラマ写真なら"fisheye"とします。
"maptex"はパノラマ写真のファイル名です。
"angle_rotatez"は方位の調整角度です。あとで必要に応じて変更します。
[location]以降は撮影地の位置情報です。サンプルは京都市役所の位置を記述しました。
作ったlandscape.iniファイルとパノラマ写真(空を透明化した)を選択して、ZIPファイルに圧縮します。
ZIPファイルに好きな名前を付けたら、風景ZIPファイルの完成(仮)です。
Stellariumを起動して、「空と表示の設定」を開き、
「風景」タブの最下部にある「風景の追加/削除」ボタンを押します。
大きな「ZIPファイルから新しい風景をインストール」ボタンを押して、
先ほど作ったZIPファイルを選んであげましょう。
成功しましたか?
先ほど記述した「説明」が表示されています。
このウィンドウを閉じると、何ということでしょう、どこかの公園がStellariumの背景風景に!
方角の文字列「南」などが見かけの高度0°です。
この素材写真は地上2mくらいの高さから撮影されたようです。
ご自身でパノラマ写真を用意される際は、鏡筒を載せる高さから撮影して下さい。
Stellariumに読ませるパノラマ画像ファイルの縦ピクセルの中央が、見かけの高度0°と扱われるようです。
ダミーでプレースホールドして調整できるので、方法は別エントリで詳述します。
Stellariumへの設定(方角の調整)
ここでは方角を確認します。
実際の撮影地で正確な方角を確認して、確実な目印を見つけておきましょう。
たとえば実際の撮影地でこのお宅の屋根の端が正確な真北なら、
Stellarium上で拡大するなどして、実際の方角とのズレを確かめます。
グリッドを表示すると簡単です。
ここでは+344°なので、16°ズレているようです。
先ほどのlandscape.iniファイルを開いて、
"angle_rotatez"を16.0°と書き換えて、landscape.iniファイルを上書き保存し、
先ほどと同じようにZIPファイルを作り直して、Stellariumで読み込み直します。
するとこの通り方角が修正されました。
まとめ
いつもの撮影地(特に自宅)の背景風景を設定すると何がうれしいかというと、
ギリギリを攻めることができます。
ここではM106は屋根に隠れてしまうけど、Vacuum Cleaner Galaxyやふくろう星雲はかすめるだけで2時間後に沈むまで余裕があると分かります。*5
また、空を透明化する際に電線やアンテナを残すことができていれば、
「○時○分に撮影対象が電線を通過して(電線掩蔽?)、像が荒れる!」と予め知ることができます。
多くの電線に囲まれる劣悪な環境で自宅観望する私のような人にはとても重宝します。
遠征先など開けた場所でも、「一箇所だけ高い木があるのを想定できず、計画より早く撮影対象を隠されてしまった!」などの悲しいインシデントを防げるのではないでしょうか。
パノラマ写真の撮影は、夕方の機材セッティング時にスマホ等で軽く撮る程度のもので、次の遠征時に撮影計画に使えます。
何なら夜の撮影中にスマホのナイトモードで一枚ずつ狭い範囲を広角レンズ撮影したものを、Photoshop等でつないでパノラマ画像化したものでも十分です。
障害物の輪郭が捉えられれば用途に足りますから。
Stellariumへの撮影地風景設定、自分はものすごく便利に使えて重宝しているのですが、皆さんはいかがでしょうか?
自分のような劣悪な環境で観望している人は少なかったり?
といった具合にずっとStellariumで風景設定してきましたが、ステラナビゲータでも一応可能です。というか環境が適合するならステラナビゲータの方がぼくは使い慣れていて好きです。
ただし最大45°まで。*6
45°を超える障害物が周囲にない良好な環境の方はステラナビゲータでもOKです!
建物で半分隠されるベランダが常置観望地の方はぼくと握手!!
追記
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【追記1】
天リフさんにピックアップして頂きました。ありがとうございます!
【追記2】
天リフさんピックアップで実際に試して下さったブログエントリを知りました。
試して下さってありがとうございます!(知っていても中々やる気になりませんよね)
カメラde遊ingのブログ Part3 : 番外編 (ステラリウムの風景を弄る)
世界最高の360度カメラTHETAを使われていてうらやましい限りです!
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参照したwebサイトなど
次のwebサイトなどの参照・参考にしました。ありがとうございました!
2) user guide(EN,PDF) - Stelarium公式webサイト
3) 観測地の風景をStellariumに設定する - starWatching
4) Stellariumのカスタマイズ - 元天文少年の星撮りブログ
5) 風景のインストール方法 - Stellarium公式webサイト(日本語)
6) Displaying Your Local Horizon in Stellarium -- A Simplified Approach - James Lamb YouTubeチャンネル
7) Creating a Custom Landscape for Stellarium - Martin’s Astrophotography YouTubeチャンネル
*1:ライセンスをよく確認して、ブログ掲載や写真の編集・加工が認められているものを使っています。
*2:加工の仕方は別エントリで書きます。
*3:空を消して透明化するため。ロック解除しないと透明にならない。
*4:Photoshopで空の部分を透明化する方法を詳述しますが、無償のGIMPでも可能です。例えばこちらの記事が参考になります。あと学生さんの場合、大学がAdobe Cloudを全学包括契約しているかも知れません。大学の学生部やリンク先の下の方をご確認下さい。
*6:自宅ベランダ観望だと高度45°で足りないことが多いのではと思われます。今後の参考にして頂けましたら……メインはステラナビゲータなので!>アストロアーツ様