へぼてんブログ

めっちゃ楽しそうなのに下手なおっさんとして天文趣味の裾野を広げます!

色つきの星雲と、視細胞の話。

ほしぞLOVEログ SAMさんの記事について話題になっているので、すこーしだけそっち方面を学んだ経験から書きます。

hoshizolove.blog.jp

これは、「45cmドブ」(大口径)がカギと思います。
小口径鏡筒で明順応したまま眼視しても、おそらく何も見えません。

ヒトが色を感じる仕組みには、ヘルムホルツの三色説とヘリングの反対色説が対立し、現在ではそれらの折衷説とでもいうべき段階説が受け容れられていますが、とどのつまりは650万の錐体細胞と1億2000万の桿体細胞の話に行き着く点、両説は共通します。

「光と色と」様より引用*1

人の目はしばしばカメラに置き換えて説明され、水晶体がレンズ・網膜がフィルム(又は撮像センサー)です。

網膜にびっしりと視細胞が並んでいて、これら視細胞が光を受容すると信号が視神経に伝達され、私たちの灰色の脳細胞に届けられて「これは何を表しているのか?」と色や形を推理し始めます。

網膜の真ん中を「網膜中心窩」や「黄斑部」と呼び、ヒトの視細胞のうち錐体細胞は網膜中心窩に集中しています。

錐体細胞は、明るい対象にしか反応できない反面、色と形の識別が得意です。
ヒトはこの錐体細胞が中心窩に集中しているおかげで、他の動物と比べて暗がりで目が利かない代わりに、文字のような細かい形の識別や色の識別が得意です。

桿体細胞は、弱い光に鋭敏に反応する反面、色が分かりません。
暗がりでものを見たときに、色がよく分からないのはそのためです。
ヒトはこの桿体細胞が中心窩以外の網膜全体に存在します。「眼視はそらし目で」というのは、桿体細胞が中心窩以外に多いことを利用して、弱い光を鋭敏に拾おうとする営みを端的に表した言葉と思います。

 

言い換えれば、錐体細胞は明るい対象専用のカラーカメラで、桿体細胞は暗い対象専用のモノクロカメラです(又はナイトビジョン)。

 

「明順応」「暗順応」は、ロドプシンの働きが関係します。

TryIT様より引用*2

桿体細胞(暗所用モノクロカメラ)に含まれるロドプシンは、光を受けるとレチナールの構造がシス型に変化し、レチナールとオプチンの結合状態が保てなくなり、その結果、明所でロドプシンが分解されます。

ロドプシンは弱い光を受容して反応する視物質です。
これが、明所では分解されて桿体細胞の働きが低下することを「明順応」と呼びます。
反対に、暗所ではロドプシンが合成されて桿体細胞の働きが高まり、これを「暗順応」と呼びます。

 

つまり、明順応状態では桿体細胞の働きが弱いため、錐体細胞(明所専用のカラーカメラ)だけが働くことになり、「弱い光は『見えない』」状態です。

 

ただ、厄介なのが、錐体細胞で働くフォトプシンは、常に生理活性を持つのです。

つまり、「暗順応」状態は、カラーカメラ(錐体細胞)とモノクロカメラ(桿体細胞)が同時に動いていて、だけどカラーカメラが拾える強さの光が存在しないため、結果的にモノクロカメラが拾う情報だけが私たちの灰色の脳細胞に届けられて……もういいですかそうですか。

 

先の先のTryIT様の解説にもある通り、暗がりで突然に花火が上がっても、私たちは花火の色を認識できます
これは、「暗順応」状態/「明順応」状態を問わずに錐体細胞が働いているためで、私たちは常に精密なカラー情報を拾い上げることができる待機状態にある訳です。

 

となると、「暗順応」状態だろうと、十分な強さの光があれば私たちはカラー情報を拾えるはずなのに、なぜ私たちは「星雲に色が付いて見えない」のか。
説明がしづらいです。

 

私の仮説は、
「大口径ドブソニアンといえども、錐体細胞のフォトプシンが十分に働くに足りる強さ(量)の光には足りないため、主に桿体細胞のロドプシンが視神経に多くの情報を提供して、錐体細胞フォトプシンが微弱に視神経に届ける情報が埋もれてしまっている
しかし、明順応状態で大口径ドブソニアンを覗けば、桿体細胞の働きが弱いため、錐体細胞が辛うじて発する微弱な情報埋もれずに済むため、色つきの星雲が見える」
というものです。
(小口径の光量では、錐体細胞が辛うじて働く程度にも足りないため、何も見えない)

これは何らのソースにも基づかない、私が自分の頭の中だけで何の根拠もなく考えたことですので、全く不確かな仮説に過ぎません。

ただ、きちんと根拠のある情報と、実際に経験されたことを両立できる仮説ではあるなー?くらいのことを思っています。

と、そんな感じの書き散らかしでした!

どなたかより詳しい方、後はお願いします!

 

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追記

脳による補正の影響(トレーニング効果)による説明を考慮してはどうだろう?
という示唆をいただきました。

たしかに、視細胞の特性だけで押し切ろうとする無理より、エレガントな説明に感じます。ありがとうございます!
ご紹介とともにお礼申し上げます。